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市民館は、学校から車で5分程のところにあった。
小さい体育館だったけど、一部がガラス張りになっていて、ダンスをするには調度良かった。
「それじゃ、結城先生!ご指導賜りたく!」
先生は押忍!みたいな感じで言った。
「え、いや、先生なんて…。っていうか先生は先生じゃないですか」
僕は自分でも若干何を言っているのかわからない事を言ってしまい、先生に笑われてしまった。
「はは、結城って結構面白いよな。さっきも何もないところで転ぶし。しっかりしてそうで、若干天然入ってる感じだな」
それ、結構周りから言われる。
「しっかりしてそうでしっかりしてなくて、すいませんでした」
僕はちょっとムスッとして答えてしまう。
「いやいや、しっかりしてないなんて言ってないぜ。天然で可愛いな、って思ったんだよ」
それを聞いて、かぁっと顔が赤くなるのを感じた。
先生に可愛いって言われると変な感じ…。
ていうか別に僕、可愛くなんてないし。
「じ、じゃあ、時間もないし始めましょうか」
僕は誤魔化すように言った。
先生は「お願いします、先生」なんておどけながら言っていた。
僕なりに考えてきたカリキュラムで進めることにした。
「まずダンスの基本にダウンとアップがあるのはわかりますよね?」
「ああ、それはわかるんだが、なんかこう形がかっこよくないんだよな。」
先生は実際にダウンをやってみてくれた。
「あ、多分、腕の持ち上げ方ですね。身体を下げるときは、腕全体じゃなくて肘を持ち上げるんです。こういう風に」
僕は実際にやって見せた。
「こ、こうか?」
先生は試行錯誤しているようだった。
「あ、そうです!もうちょっと肘があがるといいと思います!」
そう言って、先生に近付いて腕を触りながら教えた。
そこで僕は、先生の腕の太さに驚いた。
すごい、丸太みたい。
いいなぁ筋肉。
「結城?どうした?」
「え、…あっ」
僕は無意識のうちに先生の腕を両手ですりすり触っていた。
僕はまたかぁっと顔が赤くなる。
僕、さっきから言動がおかしい。
変な子だと思われてる気がする。
「結城、もしかして俺の筋肉に惚れたか?」
先生が覗き込むようにニヤニヤしながら聞いてきた。
「あ、あの、筋肉かっこいいなって思いました。僕はなかなか筋肉つかないから」
僕は恥ずかしくて目を逸らしながら言った。
「筋肉がほしいのか?成長期にあまり筋肉付けると背伸びなくなるぞ」
「それは、遠回しに僕の背が小さいって言っていますか?」
僕はまたムスッとした表情で言ってしまった。
なんか、先生、僕のムスッとしちゃうボタンを結構押してくる。
でも、僕がそういう顔をする度に先生は笑う。
「ははは、そうは言ってねーだろ?」
そう言って、僕の頭を撫でてきた。
大きな手。
僕の頭がすっぽりおさまっちゃってる気がした。
また胸が鳴る音がした。
鳴り止んでほしくても鳴りやんでくれない。
僕の事を撫でる先生の笑顔を見る度に、鼓動が止まらなくなって、胸がきゅっと苦しくなる。
なんでだろう。
こんなの初めてだった。
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