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時間はあっという間に過ぎた。 談笑しつつ、ダンスを一緒にやった。 先生と過ごす時間は、クラスメイトやストリート仲間と過ごす時間とはまた違った楽しさがあった。 僕が思ったとおり、先生は、見た目はワイルドだけど、優しくていい人だった。 楽しかった。 心の底から楽しいと思えた時間だったと思う。 そして、この時間が終わるのが寂しかった。 練習、この1回で終わりなのかな…。 帰りは約束通り、車で送ってくれた。 「送ってもらって、すいません」 僕は助手席から先生に声をかけた。 「なーに言ってんだよ、付き合わせたのは俺だからな」 先生はわざわざこっちを向いてニコッとする。 「ま、前向かないと危ないですよ」 僕は誤魔化すように言う。 その笑顔でこっちを見ないでほしい。 なぜかわからないけどドキドキしてしまう。 「あ、そうそう。腹減ったろ?結城にあげようと思って、パンを買っといたんだ。俺の家の近くのパン屋なんだが、すげーうまいんだ。まぁお礼って事で。家帰ったら食ってくれ」 そう言って、先生は前を見ながら片手でパンの入った袋を僕に手渡した 「ありがとうございます。貰っていいんですか?」 「あぁ、貰ってくれ。特に俺のお気に入りはピーナッツバター入りのパンだから、それは是非とも食って欲しいな」 ピーナッツバター入りのパン… ハンバーガーとかを食べそうなイメージの先生がそんな甘いパンを好む事が何かおかしくて僕はクスっと笑った。

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