33 / 51
32
暫くして、ラーメンが来た。
「あ、おいしい」
ひとくち食べた結城が言った。
よかった、気に入ったようだ。
「うまいだろ?」
そう言って結城の方を見た。
こんなに近くで結城の顔を見たのは初めてかもしれない。
結城の横顔は、鼻筋が通っていて、肌も艷やかで、ニキビひとつなく、とてもきれいだった。
美少年ってこういうこと言うんだな、と俺はしみじみと感じた。
こんな可愛い少年と、俺みたいな熊男が一緒にいるって何か不思議だな。
周りからはどう見えているんだろう。
ラーメンを食べ終わり、外に出る。
「お、雨、止んだな。雨上がりの匂いがするな」
「ペトリコール」
結城が呟くように言った。
「ん?なんだそれ?何かの呪文か?」
「雨に濡れた地面や植物が発する匂いの事を、そう言うらしいですよ」
そういって、結城は深呼吸をした。
「僕、この匂い、好き」
そう言って、俺の方を見てニコッと笑う。
恋に落ちる瞬間というのは、まさにこういうときなのかもしれない。
雨の匂い
夏の風
ラーメンの香り
結城の笑顔
俺は、
この15歳も年下の少年を好きになっていた事に気付いた。
ともだちにシェアしよう!