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先生は、僕の腕を引っ張り、抱き寄せた。
その大きくて温かい胸に僕は抱かれた。
「結城、結城…」
そうしながら、先生は僕の名前を繰り返し呼んだ。
「せんせ…っ、あんな大声、近所迷惑…っ、ですからね」
恥ずかしい気持ち、
安心した気持ち、
嬉しい気持ち、
よくわからない気持ち、
胸の鼓動。
それらを隠したくて、僕はそう言った。
でも声が震えてしまった。
涙が止まらなくて、うまく喋れない。
そんな僕を先生は強く抱きしめ、頭を撫でてくれた。
「わりぃ、結城。でも、俺は近所に聞かれたって構わないぜ」
先生はニコッと笑う。
その笑顔、ずっと見たかった。
僕らは暫くそうやって抱き合っていた。
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