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1時間程、車は走り続けた。 途中、「やべー、ガソリン足りるかなー」と怖い事を言っていたが、なんとか目的地に着くことが出来た。 先生は、海岸から少し離れた駐車場に車を停めた。 車のドアを開けると同時に、潮の香りがした。 「なんか、しょっぱい匂いがします」 「結城、これが海の匂いだよ」 「これが、海の匂い…」 僕は、初めての海の匂いに感動した。 生温かい夏の風が、海の匂いを運んできているんだ。 初めて来たはずなのに、なぜか懐かしいような気持ちになった。 「お、やべ、時間だ。結城、海岸まで走るぞ!」 「わっ、せんせ…っ」 先生は僕の手を掴んで走り出した。 僕は、びっくりしたけど、先生に合わせて走った。 「あ、先生!車の鍵、閉めました?」 僕は走りながら先生に聞いた。 「あ、閉めてねぇ!あとでいいや!」 「あとでって…、車上荒らしに合っても知りませんよ!?」 「こんな朝っぱらから車上荒らす奴なんていねーよ」 そんな事を言いながら僕らは海岸に向かって走った。 先生の大きな手が僕の手を包み込む。 先生の大きな背中が僕の目の前を塞ぐ。 僕は手をきゅっと強く握り返した。 このまま、繋いだ手の感触を忘れたくなかった。

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