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第23話

「そう?」 「じゃあ俺たち反対側のホームに移動するけど」 「ああ。……楽しんで来い」 後ろ髪をひかれる思い。いいや、電車で引っ張られる。 が、俺には保健室でチンコ握り合った女がいるし、女なら誰でもいいというウソを本当にするわけにもいかねえ。 いや、やっぱ行こうかな。同じ高校の女どもはもう噂信じ待てるなら新たな出会いに期待を……。 あいつらを追うかと踵を返すと、サラリーマンやOLが階段からわんさか降りてくるのが見える。 今帰らないと、どうやら帰宅ラッシュで大迷惑になってしまうらしい。 渋々電車に乗り込むと、もう座る場所もない状態だった。 でかい俺は、なるべく端っこ。出る方の扉の端っこに小さくたっているしかない。 「わっ」 「おお、すまない――っと」 ぶつかってよろめいた男の肩を支えた。 すると振り返った男は、俺が今朝、保健室へ運んだきれいな顔をしたやつだった。 「わ、熊谷先輩だ。あの」

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