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第29話

やべえ。固くなってきた。 満員電車で固くなるとか、しかも明昌の足の刺激のせいとか言えねえしばれたくない。 あと四つ。あと四つ駅をやり過ごせばいい。 くっと唇を噛んで刺激や背中の圧に耐えているときだった。 駅について、明昌の背中のドアが開いた。 入ってくる人に端をとられないよう明昌の肩を隅に引き寄せたが、その腕を強く引っ張られる。 「え、お?」 あっけにとられている間に、俺は明昌に引きずられて降りる予定のない駅に立っていた。 プシュっと電車のドアは閉まり、発車していくのを横目で追いながら固まった。 気のせいじゃなかったら今、明昌はおれのことを引きずり下ろしたよな? この小さな体で、俺を引っ張ったよな。 「先輩、無理しちゃだめです。僕にひっぱられるなんてよっぽど体力使ってたんでしょ」 「あ、そうか。そうかも」 「先輩一人に負担かけるぐらいなら降りた方がましです。僕、自転車通学にしようかな」 こいつ。 俺を気遣って引きずり下ろしてくれたのか。 本当に、見た目と同じ天使のような性格の男だ。 「先輩、顔色が悪いです。ベンチに座っててくださいね。飲み物買ってきます」 「悪いな」 明昌が背中を向けたので、俺は固くなりつつあったちんこを必死で抑え込む。 学校の、脂っこく気持ち悪い先生たちの顔を思い浮かべながら、いまだ放つことができない熱をくずぶらせていた。

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