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羊谷 明昌の場合。
「ありない。ほんと、ありえない」
お茶と炭酸飲料のボタンを押しながら、静かに僕は怒っていた。
満員電車で、あわよくば先輩に痴漢しようと思っていたのに計画が狂わされた。
というか、男のくせに乳首の反応良すぎでしょ。
自分で開発してるのか、はたまたセクハラされて鍛えられたのか僕にはわからない。
が怒っている理由は違う。
満員電車で先輩が、僕以外に触れられていたのが耐えられなかった。
あの体はいずれ僕のものだ。
気安くさわっほしくない。
せっかく守ってくれていて、いっぱい汗ばんでいい匂いがしてきたのに下ろしてしまったのは悔しい。
先輩の汗のにおいは僕を欲情させるしね。
「先輩、炭酸とお茶どっちがいいですか?」
「さんきゅ。お茶もらう」
欲望を隠して、羊の皮をかぶりながら先輩にお茶を渡す。
ああ。信頼しきったまぶしい笑顔で受け取る先輩、食べちゃいたいぐらい可愛い。
「満員電車、ちょっと怖かったですね。それに先輩もきつそうでした。無理されないでくださいね」
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