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第32話

先輩は面倒くさそうに頭を掻いていたけれど、面倒見のいい兄貴だというのはもう分かり切っている。 電車をやめ、バスで三駅ほど行くと、商店街の前に降りた。 お肉屋さんのコロッケの香りや、魚、やおや、誰が買うのが趣味の悪いおばちゃん服屋に、駄菓子屋、上を見上げれば『猛獣学園決勝戦おめでとう』と去年の応援幕が飾られたまま。 ノスタルジックなのに、生きている商店街。 寂れていないのもすごいなと感心してしまった。 「おい、こっち」 「はい」 カバンを胸の前で抱きしめて、奥へ入っていく。 お弁当屋の隣に赤い暖簾のラーメン屋さんがあった。 中を覗くと満員で、椅子に座って漫画を読みながら待っている人もいる。 「おい、こらてめえ! さっさと手伝え、この野郎!」 「うっせ。受験生に店、手伝わせようとしてんじゃねえよ。客だ。ラーメンとチャーハン、餃子!」 「忙しい時にがっつり頼んでんじゃねえよ!」 熊みたいに大柄なおじさんと、先輩が大声で怒鳴りあっているのに、お客様はにこにこ見ているだけだった。 どうやら日常の光景らしい。 「悪いけど、仕事ができねえクソ爺だから手伝ってくるわ。座ってまっとけ」

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