32 / 155
第32話
先輩は面倒くさそうに頭を掻いていたけれど、面倒見のいい兄貴だというのはもう分かり切っている。
電車をやめ、バスで三駅ほど行くと、商店街の前に降りた。
お肉屋さんのコロッケの香りや、魚、やおや、誰が買うのが趣味の悪いおばちゃん服屋に、駄菓子屋、上を見上げれば『猛獣学園決勝戦おめでとう』と去年の応援幕が飾られたまま。
ノスタルジックなのに、生きている商店街。
寂れていないのもすごいなと感心してしまった。
「おい、こっち」
「はい」
カバンを胸の前で抱きしめて、奥へ入っていく。
お弁当屋の隣に赤い暖簾のラーメン屋さんがあった。
中を覗くと満員で、椅子に座って漫画を読みながら待っている人もいる。
「おい、こらてめえ! さっさと手伝え、この野郎!」
「うっせ。受験生に店、手伝わせようとしてんじゃねえよ。客だ。ラーメンとチャーハン、餃子!」
「忙しい時にがっつり頼んでんじゃねえよ!」
熊みたいに大柄なおじさんと、先輩が大声で怒鳴りあっているのに、お客様はにこにこ見ているだけだった。
どうやら日常の光景らしい。
「悪いけど、仕事ができねえクソ爺だから手伝ってくるわ。座ってまっとけ」
ともだちにシェアしよう!