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第35話

結局、先輩は僕が寄り掛かっていても平気そうで替え玉までしてから席を立った。 「散らかってるから、蹴飛ばしながら進んでくれ」 そう注意してくれることはあるほど、洗濯物で座れないソファと、穴が沢山開いた襖。 おもちゃやランドセル、ゲーム機などで居間は足の踏み場がほぼない。 足で端に避けながら二階に上がっていく。 「ババアは俺が小学校の時に、店の売り上げ持って蒸発してよ、下にまだ三人、小学生の弟たちがいるんだけど」 「ええ。大変ですね」 僕がお手伝いしてあげたい。とちらりと一階のベランダを見ると、洗濯物がきれいに干されていた。 「あの、家事は誰が?」 「うちのジジイができると思うか? たまに学生に無料でラーメン食わしてるお礼に、外の洗濯機に洗濯物入れてたら近所のおばさんたちが回して干しててくれてる」 「えええ、他人が?」 階段の一番上で止まると、振り返った。 「さすがに、自分の下着はよお、自分で洗ってる。一階に干してたら、よれよれだったからっておばさんたちが勝手にセンスねえパンツ買ってくるからよ」 「……ああ、そうですよね」 先輩、黒のボクサーパンツだったね。 あのパンツは、僕がこっそりカバンになかに大事に持っていることはまだ内緒にしてる。 「ここ。狭いけど、適当に転がして、場所を確保してくれ」

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