46 / 155
第46話
「まさかお前」
「先輩は、この先一生童貞です。かわいそうにね」
「てめえ、……んんっ」
撫でられ爪でカリカリと刺激されただけで変な声が出る。
「大好きです。めちゃくちゃ好き。先輩が僕で乱れるのが見たい。屈強で誰にも屈服したことなさそうな先輩が、僕の下で雌になるの、見たい」
「普通に雌を雌として愛してやれ。雄は雄だ」
「いいえ。強い男が、弱い男を雌にできるんです」
「その理論なら俺がお前を――」
言いながらはっとした。
俺は動けていない。この小さな天使のような顔をしたセクハラ野郎の足をほどけない。
「お前、お前、何者だ」
「先輩を一目見た瞬間に狂わされてしまった、悲しい男です」
伸びてくる手を、何度も払った。何度も払って水面にたたきつける。
するとその手が、俺の目にお湯をかけた。目を閉じた瞬間、覆いかぶさる影。
どうして力で敵わないんだ。
抗い逃げ出したくて暴れたのに、触れてきた唇は熱くぷにゅっと柔らかくて。
啄まれ、頭がイかれてしまう。
どうして、男にキスをされて嫌じゃねえんだ。
ともだちにシェアしよう!