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第46話

「まさかお前」 「先輩は、この先一生童貞です。かわいそうにね」 「てめえ、……んんっ」 撫でられ爪でカリカリと刺激されただけで変な声が出る。 「大好きです。めちゃくちゃ好き。先輩が僕で乱れるのが見たい。屈強で誰にも屈服したことなさそうな先輩が、僕の下で雌になるの、見たい」 「普通に雌を雌として愛してやれ。雄は雄だ」 「いいえ。強い男が、弱い男を雌にできるんです」 「その理論なら俺がお前を――」 言いながらはっとした。 俺は動けていない。この小さな天使のような顔をしたセクハラ野郎の足をほどけない。 「お前、お前、何者だ」 「先輩を一目見た瞬間に狂わされてしまった、悲しい男です」 伸びてくる手を、何度も払った。何度も払って水面にたたきつける。 するとその手が、俺の目にお湯をかけた。目を閉じた瞬間、覆いかぶさる影。 どうして力で敵わないんだ。 抗い逃げ出したくて暴れたのに、触れてきた唇は熱くぷにゅっと柔らかくて。 啄まれ、頭がイかれてしまう。 どうして、男にキスをされて嫌じゃねえんだ。

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