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第52話
「……お前の家は、どうせ金持ちなんだろ」
「金持ちでも、まずキッチンにまな板とか包丁とかありません。外食か出前か、お弁当が冷蔵庫の中に入っているとか」
「ふうん。料理できねえのか」
「さあ。先輩の家みたいに温かいラーメンを食べながら怒鳴りあったり笑いあったりしないからですかね」
ここらへんで遊んでくれる女の子たちなら同情してくれるし、金持ちだと気づいて優しくしてくれる。
甘えていいよ、とか、私がご飯作ってあげるよとか。
そのまま抱き着いて甘えて、押し倒しちゃうのがパターン化している。
「ラーメン以外は商店街のばばあたちが勝手に冷蔵庫におかずいれてくれたり、お惣菜くれたり、俺もまな板と包丁使ったことねえな」
「先輩も?」
「今度一緒に何か作―-いや、お前とか今日までだ。これ以上はお前には優しくしたらいけねえ」
っち。今、また僕のことを面倒見てくれようとしていたのに。
少し起き上がると、先輩は小学生の弟くんをおなかに乗せて、僕ガードを作っていた。
あと、ゴキブリ用のスプレーも持ってる。僕はゴキブリか。
「……僕は世界中で誰よりも先輩にやさしくされたいです」
「男のケツに、ちんこ挿入したいっていう奴に愛なんかねえよ。俺は女がいい」
女(役)がいい。
僕の中でそう変換しておいた。
そしてタオルって言うのは、口でひっぱたらベルトと腕の隙間から簡単にするりと抜けるのだ。
今話している隙にタオルを抜いた。
ギチギチに縛らなかった優しさが仇になったね。
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