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第73話
「せんぱーい。焼きそばパン、買ってきました。全員分ですよー」
「……お前」
ついさっき、自習の時間にこいつと近づきたくないと思っていたのに、数時間で会いに来やがった。
手に一杯の焼きそばパンを持ってきている。どこから持ってきたんだろうか。
うちは食堂もあるし、朝注文したら弁当も買える。購買はあるが、パン屋なんて来ない。
どこから大量に持ってきたんだ。
「わあ、明昌くん、おつかいできて偉いね」
「お金はちゃんともらうのよ。領収書持ってる?」
「大丈夫。これは昨日、貧血だった僕を助けてくれたお礼だから」
くそう。俺も美女に頭をなでられてほめられたい。
「先輩のお友達たちはー?」
「あ? 屋上でバスケ。俺はちょっと寝てから参加する予定だったんだよ」
「そうですか。僕の膝枕で寝ます?」
「女の膝がいい」
だれが変態の膝で寝るかよ。いつ竹の子のように俺に顔に攻撃するかわからんグロいものをもっているくせに。
「もー! 先輩のえっち!」
「お前だけには言われたくない」
近づいてくるなと頭を押さえると、進めなくてあたふたしている明昌がちょこまかしていて、ちょっど玩具みたいで可愛かった。
それは、俺たちを見ていた女の集団も一緒だったらしい。
くすくすと笑い声が聞こえてくる。
「熊谷くんって怖いイメージだったけど、明昌くんと一緒だとヤンチャなお兄ちゃんってかんじよね」
「うん。前はロボットみたいな屈強なキン肉マンって感じだったのに、顔がイケメンなだけにじゃれてる姿が可愛い」
――なんだと。
バッと女たちの顔を見たあと、明昌の顔を見る。
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