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第79話

「勝負の途中だからいいや。行ったら昼休みが終わりそうな気がするしな」 「よーし。じゃあ、決着を――」 『今すぐ職員室へ来なさい。今朝のお礼にお客様がお見えです。繰り返します』 「あ――……」 つい助けてしまったが、だから連絡先を教えたくなかったのに。 お礼をされる義理はねえ。 俺の家に母がいないからと、近所のおばちゃんたちが世話をしてくれるのと一緒だ。 あの駅で、貧血で倒れたサラリーマンを俺なら抱きかかえて介抱できたからしただけ。 ただそれだけだ。 「せんぱい、行くんですか?」 寂しそうな明昌の顔に、俺は困ったが頷く。 「ああ。パパっと終わらせてくるしかねえみたいだ」 「そんな格好で行くんですか」 「服を着させろ。勝負は一旦保留だ」 脱いだズボンと取られた靴下を穿きながら明昌以外の奴らに断って職員室へ行く。 職員室では、まるで白馬に乗った王子様のような、大人の色気満々の男がにこやかに立っていて、俺を見るや否や駆けだしてきた。

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