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第88話

「何に使うんスか?」 「昨日、油っこいものを食べたって言うから、油を取り出すんです。胸と下、どっちがいい?」 「えー……まじかよ」 「医学書にも書いてます。読みますか?」 渡された本、ドイツ語だし。 が、樹木寺さんは俺の顔を見て不思議そうに首をかしげている。 俺が驚いていることの方がおかしいって様子だ。 エステサロンなんて確かに縁のない生活をしてきた。 だから俺の方が無知なのか。 「下からって、搾乳機をちんこにでもつけるんスか?」 「おしりからと性器から、選んでください。でも胸の方が痛くないかな」 「まじかよ……。あ、明昌の方は?」 「あの子は違うコースだよ。全身マッサージ」 俺もそれでいい。 どうしてだろうか。最近、触ってほしい場所に野郎が触ってくる。 触ってほしいのはお前たちじゃねえのに、だ。 「じゃあ、胸でいいね?」 「あー、はい。おねしゃーっす」 早く終わんねえかな、と透明なお椀型の搾乳機が両乳に取り付けられて、泣きそうになった。 「……いい体だね。鍛えている男の子の搾乳は初めてだよ」 紳士的に微笑む樹木寺さんとは裏腹に、スイッチを押された瞬間、激痛で俺は体が大きくしなったのであった。

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