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第94話

艶々になった吸血鬼ならぬ吸精鬼は、申し訳なさそうに黒いカードを渡してきた。 「VIp専用のカードです。このカードをお持ちの方なら、ご予約もいりませんし、エステシャンの指名はもちろん、最高のエステを提供いたします」 これが女子が喉から手が出るほど欲しがっていた、有名エステのVIPカードってやつか。 「いらね」 「同じく」 「もうこれで貸し借りなしってことで。あ、リムジンで送って」 「え、いらないんですか」 驚いた樹木寺さんが、俺と明昌とカードを見ながら、不思議そうな顔で首を傾げた。 当たり前だ。痛いし、健康療法で男にフェラされるし最悪じゃねえか。 それにバスケさえしなければ日常生活範囲では足に負担はない。 エステなんて俺には必要ないのだと、改めて気づかせてもらった。 「また来てくれたら嬉しいです。なんでしたら、君はVIPカードなくても特別扱いしますので」 リムジンに今度は樹木寺さんは乗り込まなかった。 きっとサロンが忙しいのだろう。 俺たち二人のために最上階を貸し切ってくれていたらしいから仕方がないようだけど。 リムジンの運転手が安全運転してくれているおかげで、のんきにテーブルに置いてあったばななを食べることもできた。 「あー、エステ後は新陳代謝がいいから二時間はご飯食べたら駄目なのに」

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