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第96話

「……そんなに家が辛いのか?」 こいつの、性に関してのおかしい言動は、家のごたごたのせいだと思うと、ほんの少し。 ほんの少しだけ同情したくなる。 まるで頭がおかしい人みたいな、変態さに哀れみもある。 「え、好きな人のそばに居たいだけです。家は関係ないですけど?」 すっごく不思議そうな顔をされて、今俺が心配した数秒がもったいなく感じてしまう。 「辛くないなら帰れ。お前は未成年だ。親の許可なく、男の家に転がり込むなんて駄目だろ。惚れた相手ならなおさら、筋を通さねえと」 「裏筋なら……いや、なんでもないです。でも親公認っていうのも悪くないですね。あとは弟君三人もたぶらかしたいし」 今日はこいつを俺に家にいれたくねえな。本気で、入れたくねえ。 それに俺のそばに居たいというこいつの気持ちが本物だろうとからかっているのだろうと、体目的だろうと、俺は同性は恋愛対象じゃない。 しかも俺を女代わりに組み敷くとか、想像しただけで絵面が気持ち悪い。 せめて逆にこいつが女側ならまだ見れたかもしれないが、俺は無理だ。 「お前が居場所がないとか、家が辛いなら俺の家に居てもいいが、――下心しかないなら今日は帰れ」 「わかりました。帰ります」 間髪入れずにそういわれ、目が点になった。 こいつ、下心しかなかったのか。

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