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第113話
あ――……。
気づいた時にはもう遅い、とはこのことだ。
気持ちいいなら別にいいじゃん。男なら気持ちいいならもう相手が誰でも良くない?
こんなに気持ちよくしてあげてるのに。
僕の中にあったそんな傲りが、先輩の冷たい言葉にようやく間違いだったと気づかされた。
これはきっと、本気で僕のことを嫌っている。
本当に僕のことを、殺したいぐらい嫌っている。
声がそう言っていた。
恐る恐る目のガムテープをはがすと、真っ赤になった眼が僕をにらみつけていた。
「てめえのちんこなんか、腐ってきえろ」
ぺっと吐き出された唾が僕の頬にかかる。
青臭くて、僕のちんこをフェラした名残りがした。
「気持ちいいんだから、僕の恋人になってよ。もっと気持ちよくさせてあげるのに」
「まずは、この手と足を剥がせ」
本気で怒っている先輩に、本当なら僕の方が優勢じゃんか!って思っていたけど惚れた弱みだ。
これ以上嫌われたくなくて、おとなしくガムテープを解いた。
すると、ガムテープを解いた瞬間先輩は立ち上がり、チンコが出たままの足が宙を切った。
そのまま振り落とされる足。
頭に命中してふらりとよろけた僕の顔に、思いっきり拳が飛んできたのは言うまでもない。
気絶しそうなほど、チカチカする視界の中、先輩がプリントを破いて僕の口の中に詰め込んだ。
喧嘩慣れしているというか場慣れしているというか、僕が悲鳴を上げる隙も与えずに倒してしまった。
まあ、僕は反省の意味を込めて避けなかっただけだけど。
「少し、見直していたのに。この馬鹿野郎が」
「え、せんぱ、んぐっ」
口に更にプリントを押し込められ、ガムテープでぐるぐるにされたまま、僕は教室に放置された。
その後、三日ほど先輩が学校に現れなくなるのは、この僕のせいなのだろう。
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