113 / 155

第113話

あ――……。 気づいた時にはもう遅い、とはこのことだ。 気持ちいいなら別にいいじゃん。男なら気持ちいいならもう相手が誰でも良くない? こんなに気持ちよくしてあげてるのに。 僕の中にあったそんな傲りが、先輩の冷たい言葉にようやく間違いだったと気づかされた。 これはきっと、本気で僕のことを嫌っている。 本当に僕のことを、殺したいぐらい嫌っている。 声がそう言っていた。 恐る恐る目のガムテープをはがすと、真っ赤になった眼が僕をにらみつけていた。 「てめえのちんこなんか、腐ってきえろ」 ぺっと吐き出された唾が僕の頬にかかる。 青臭くて、僕のちんこをフェラした名残りがした。 「気持ちいいんだから、僕の恋人になってよ。もっと気持ちよくさせてあげるのに」 「まずは、この手と足を剥がせ」 本気で怒っている先輩に、本当なら僕の方が優勢じゃんか!って思っていたけど惚れた弱みだ。 これ以上嫌われたくなくて、おとなしくガムテープを解いた。 すると、ガムテープを解いた瞬間先輩は立ち上がり、チンコが出たままの足が宙を切った。 そのまま振り落とされる足。 頭に命中してふらりとよろけた僕の顔に、思いっきり拳が飛んできたのは言うまでもない。 気絶しそうなほど、チカチカする視界の中、先輩がプリントを破いて僕の口の中に詰め込んだ。 喧嘩慣れしているというか場慣れしているというか、僕が悲鳴を上げる隙も与えずに倒してしまった。 まあ、僕は反省の意味を込めて避けなかっただけだけど。 「少し、見直していたのに。この馬鹿野郎が」 「え、せんぱ、んぐっ」 口に更にプリントを押し込められ、ガムテープでぐるぐるにされたまま、僕は教室に放置された。 その後、三日ほど先輩が学校に現れなくなるのは、この僕のせいなのだろう。

ともだちにシェアしよう!