116 / 155
第116話
「……君って不良っぽい見た目なのにまじめだよねえ」
「うっせ。弟が三人いるからよお」
自宅に電話しようかと思ったが、あいつが120パーセントぐらい居そうなので、ラーメン屋のほうにかけた。
「親父、しばらく友達の家に泊まるからよお」
『あ? そんなことで電話してくんな』
「俺の舎弟は来てるか?」
『……ああ、この電話を逆探知しようと家の方に機械を取りに戻ったが』
親父の声も戸惑いを隠せていない。
あいつにとってはさっきの行為は、いつもの変態行動の一つで、反省もしていないってことか。
「分かった。切る。じゃあな」
急いで切って電源を消しておいた。
どうせ明日は制服も戻ってこないから帰れないしな。
「……めっちゃいいにおいがする」
あの人なら高級鰻買いそうだもんな、と思いつつ携帯を投げ捨てて一階へ戻った。
「あの、……明日はスッポン鍋にしますね」
「げえ、俺食ったことねえっす。もっと普通のでいいけど」
「じゃあニラレバ? 勢力効果でググるから」
「いやまじで、いいっす」
「……私のためでもあるんですよ」
鰻の油で濡れた唇をなめながら、樹木寺さんは楽しそうだった。
まあお世話になる人がそうしたいならそれでいいか。
ともだちにシェアしよう!