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第116話

「……君って不良っぽい見た目なのにまじめだよねえ」 「うっせ。弟が三人いるからよお」 自宅に電話しようかと思ったが、あいつが120パーセントぐらい居そうなので、ラーメン屋のほうにかけた。 「親父、しばらく友達の家に泊まるからよお」 『あ? そんなことで電話してくんな』 「俺の舎弟は来てるか?」 『……ああ、この電話を逆探知しようと家の方に機械を取りに戻ったが』 親父の声も戸惑いを隠せていない。 あいつにとってはさっきの行為は、いつもの変態行動の一つで、反省もしていないってことか。 「分かった。切る。じゃあな」 急いで切って電源を消しておいた。 どうせ明日は制服も戻ってこないから帰れないしな。 「……めっちゃいいにおいがする」 あの人なら高級鰻買いそうだもんな、と思いつつ携帯を投げ捨てて一階へ戻った。 「あの、……明日はスッポン鍋にしますね」 「げえ、俺食ったことねえっす。もっと普通のでいいけど」 「じゃあニラレバ? 勢力効果でググるから」 「いやまじで、いいっす」 「……私のためでもあるんですよ」 鰻の油で濡れた唇をなめながら、樹木寺さんは楽しそうだった。 まあお世話になる人がそうしたいならそれでいいか。

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