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第123話

すぐにラーメン屋の窓を壊して中を確認したけど、誰もいなかった。 残るは、煙が入り込んだ一階だけ。 周りの人たちに聞いても、誰も叔父さんを見た人はいないらしい。 出火元のお風呂場で倒れていたのであれば、僕も助けに行くのは無理だ。 でも煙を吸い込んで倒れているだけなら、なんとかなるかもしれない。 「明昌おにいちゃん」 三人の弟くんたちが僕の名前を呼ぶ中、僕はラーメン屋の中の水道から伸ばしたホースで頭から水をかぶった。 そして濡れた服を脱いで、口にマスクのように結んだ。 煙を吸わなければ大丈夫。 煙を吸わなければ大丈夫。 他人だったら絶対にこんなことはしない。 でも、おじさんは僕の将来の義父だし、先輩の大事な父親だ。 大丈夫。大丈夫だ。 「君、何をするの」 「消防車が到着するのを待つんだ」 商店街の人たちが口々に言葉を投げかけてくるが僕は首を振った。 僕だって、消防車が到着するまで待ちたいよ。 でも、僕の好きな先輩なら、絶対に待たない。 だから、僕も後悔はしたくないんだ。 先輩のことになると、いつも選択を間違えてしまう僕は、どうしてもこれだけは間違えてはいけないんだ。

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