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第126話

「充電器なら全メーカー用意してるよ。こっちの引き出しに何でもおいてある」 「すっげえ。てかこのマンション、最上階なのもすげえ。億ションってやつ?」 「……君が毎日おいしいもの食べて飲ませてくれたら、全部あげちゃうよ」 エロ親父の発言だ。これはイケメンが言うからギリセーフだけど、エロ親父だ。 俺が女だったら、囲われてみたいって思ってしまうほど好条件の、チートな展開だった。 が、残念ながら俺は男で、自分の食いっぷちぐらいは稼がないといけないぐらい恵まれた体だ。 親に高校までは行かせてもらった手前、こんな楽な仕事は引き受けられない。 「悪いっすけど、クリーニング終わったらすぐにでも、って、おわっ」 「どうしました?」 携帯の電源をオンにした途端、受信されるメールと着信に飛び上がった。 着信99件ってなんだ? 「君って本当、人気者だねえ」 「あのな、自慢じゃねえがこの中のアドレスは全部男だ」 樹木寺さんの方がモテるくせに何を言うのか、悲しくなってきた。 が、携帯の着信のほとんどは、明昌からだった。 逆探知とかGPSで場所が特定されそうで、電源切ってたけど切ってよかっ……。 着信の半分は明昌だが、そのあとの半分は商店街の人たちからだ。 弁当屋とか薬屋、いつも総菜くれるばあさんからも? 異変に気付いた瞬間、着信が鳴った。 いつも買う弁当屋からだった。 「はい?」 「起きて、炬隈くん、庭が火事よ」 「あ? 庭が?」 「貴方の家の庭よ! 消防は呼んだけど早く降りてきなさい」 「火事って、え? 俺、今、ダチの家なんだけど」

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