127 / 155

第127話

さあっと血の気が引くのが分かる。 携帯を握っていた手がじわじわ汗ばんでいく。 「ど、どーゆうことっすか」 「二階にまだ弟君たちが寝てるのよ! 大変だわ」 その言葉にくらりと眩暈がするかと思った。 「今すぐ向かう!」 庭? ボイラーからか? 調子が悪かったけどまだ使えると思ってたんだけど、火事……。 「すまえねえ、何か服を貸してくれ。今すぐ帰る」 「どうしたの?」 「家が火事みたいなんだ。あいつら、一回寝たら起きねえし」 カバンを持って、勝手にクローゼットから服を取り出す。 ズボンはファスナーが閉まらねえし、上の服はぱっつぱつで今にも敗れ飛び散りそうだったが、着れなくない。 急いで玄関に向かうと、ビキニパンツ一枚の樹木寺さんが慌ててキーを持って追ってくる。 「君、バイクの免許あるならこれ貸すよ」 「持ってねえっす!」 「あ、じゃあ、車を出す。車を出そう」 単車しか免許持ってねえことを後悔しながら、バスローブにビキニ姿の樹木寺さんの外車に乗り込んだ。 あいつら……無事でいてくれ。

ともだちにシェアしよう!