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羊谷 明昌の場合。
「うっ」
息を吸ってはいけない。
窓を開けながら、煙で一センチも先が見えない中を進む。
庭側の窓は逆に閉めてから台所の窓を閉めようと向かうと、何か柔らかいものを踏んでしまった。
何度か踏んで、踏み心地を確認してからハッと気づいた。
おじさんだ。未来のお父様だ。
すぐに蛇口をひねって水で濡らした布巾を口の中に押し込んだ。
そして床に転がったおじさんをまじまじ見る。
先輩と同じぐらいの身長なのに、先輩の倍ぐらいありそうな太もも。
試しに抱えてみようとしたけど、びくともしない。
確か、自分より大きい人は背中から脇に手を入れて後ろに引っ張る感じで、下がるんだ。
試しにやってみたら、ちょっとずつずりずり動き出した。
濡れたタオルで口を覆っての作業は、苦しい。
この犬小屋みたいに狭い一階の、台所から玄関までの移動なんていつもなら数秒なのに、今日は終わりが見えず、このまま放置してしまいたくなる。
何をしてるんだ、僕は。
先輩じゃあるまいし、正義のヒーロー気取りでもなく、ただ先輩への点数稼ぎでここまでして。
馬鹿みたい。
「これで両想いにならなかったら、絶対に監禁してエロいことしてやるううう」
エロいことを考えたら、力が湧き上がってきた。
先輩を、犬のエサ入れのエサを四つん這いにさせて食べさせてやる。
ズリ……っと重たいおじさんの体が動き出す。
先輩に首輪とリードつけて、裸で家の中散歩させてやる。
ズリ……ズリ……
妄想していたらだんだん楽しくなってきた。
これならいける。
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