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残念。僕の王子さまは、お姫様になりました。
「せんぱーい」
教室を出てすぐに、明昌に声をかけられた。
いじらしく、教室の前で待っていたのは明昌。
俺が出てくると、まるで磁石のように走ってくる。
「おう、どうした?」
「おじさんのお見舞いでしょ。僕、パンツ買ってきました。しましまトランクス」
「ああ、悪いな。洗濯機の中に洗濯物ほぼ投げ入れてたんだけどよお、全滅してたんだよ」
「でもお店、無事で良かったですねえ。お風呂は完全燃焼でしたけど」
当たり前のように俺の隣を歩き、慣れた様子でバスに一緒に乗り込む。
先日の卑猥な行動が夢かのように、明昌が従順で忠犬で少し不気味だった。
あの時、一番不安だった俺の手を握ってくれたのはこいつだし、絶望に押しつぶされそうになっていたのに、こいつが俺の腕にしがみついてくれて良かった。
が、変態のくせに変態な行動をしないというのも変に不気味で落ち着かないものだ。
「あのよお」
「先輩、今日も樹木寺さんのホテルですか?」
「え、ああ。でもだいぶ家の中の匂いも取れたんだがよ。弟三人が贅沢になれちまって」
樹木寺さんはホテルも所有しているらしく、その一室を貸してもらっている。
いつも五人でぎゅうぎゅうに詰まって眠っていたから、一人ひとりベットをあてがわれて大興奮中だ。
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