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第142話
好きではなかったのかな?
俺の反応を窺うように見上げてきた明昌の頭を、くしゃくしゃに撫でる。
「今頃気づいたのかよー。当たり前だろー。男が男を好きに、しかも俺を好きになるわけねえじゃん。青春の過ちってやつだよなあ」
よしよしと頭をひとしきり撫でたあと、ふうと溜息を吐く。
「良かった良かった。お前みたいな可愛い顔の奴が、真っ当な意見に戻ってよかった良かった」
「……先輩」
「今日はお祝いになんか俺がおごるか? 牛丼ぐらいなら」
「先輩ってば。そっと、肛門科です。まだ行かないでいい科です」
「お?」
見上げると、いつも曲がる渡り廊下の手前で曲がっていた。
危ない危ない。親父が痔で入院みたいに思われてしまう。
「悪い悪い。つい嬉しくてな。ほら、いくぜ、二階のナースセンターから一番遠い部屋だからよお」
動揺しているのか、いや、違う。
これでいいんだ。明昌からようやく当たり前の価値観が聞けて安堵してるのだろう。
そうだよな。俺みたいに筋肉だけの単細胞馬鹿をこんな可愛い男が好きとかいうのはおかしいよな。
「わ、先輩っ」
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