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第149話
「……」
「あれー? 聞いてくれてます? 炬隈くーん?」
俺の前で両手をパタパタしてくる樹木寺さんを真っ直ぐ見る。
「樹木寺さんの健康療法だし、別に減るもんじゃねえし、世話んなってるから俺は別にいいって思ってたけどよお、すげえ怒ってるやつがいるんだよ」
「ああ、うん。いるよね」
「あいつの方が何倍も最低なことしてるんだけどよ、最低なくせに怒ってるってことは、不誠実な行為なのかなとか思っちまって。悪いな。もうできそうにねえ」
頭を掻きながら謝る。こんなに樹木寺さんには世話になってるのに、申し訳ないがもやもやすることはしない方がいいと俺の中で結論が出た。
「真面目だよねえ。固すぎるというか。まあそのせいで女の子にもてなさそうだけどね」
「余計なお世話だ」
俺だっていやなんだよ。でも、すっきりさせたかった。
「来週には火事の片付けと、家の中の匂い消しが終わるんで戻るから、それまでのマンションの家賃代は」
「いいのいいの。私だって君にお世話になったんだし、甘えられることは甘えていいんですよ。君はまだ高校生なんだからね」
頭を撫でられて、不意に泣きそうになった。
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