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第153話

「先輩は散々飲んでもらってるじゃん。次は僕の番」 「お前、男の口の中に突っ込んで乱暴するのが好きな変態かよ」 「は?」 何の喧嘩をしているのか、俺にもよくわからなくなった。 なぜ俺たちは自分のものを飲ませるのに、喧嘩しなくてはいけないのか。 だが、お互いを睨むのをやめるわけにはいかない。 「あのう……」 嬉しそうに樹木寺さんが手を上げ、視線をさ迷わせた。 「私はお二人とも飲めますよ」 「黙ってて」 「ちょっと口出さないで」 俺たちに同時に言われ、耳と尻尾がしゅんとなった樹木寺さんは、とぼとぼとゲームをする弟たちのもとへ向かった。 残ったのは、よくわからんが言い争いをしてしまった俺と明昌だけ。 「なんのつもりですか?」 「なんって、お前こそ、別に樹木寺さんに恩もねえだろ」 一瞬黙った明昌は、俺を睨む。 「先輩は僕に恩ができましたよね。だったら咥えさせてくれるんですか」

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