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俺と葉山さんの方向へ、猛スピードで車が突っ込んで来た。 「ひいい」 その車は、俺と葉山さんに当たるか当たらないかのギリギリで止まり、思わず葉山さんが俺を離して座りこむ程だった。 警察官の二人も、避難を済まして俺達の方へ駆けよって来る。 黒のベンツから、ゆっくりと降り立ったのは、鋭い眼差しで煙草を咥えた、高身長の――どうみても堅気には見えないようなオーラを放っている男だった。 黒の髪を後ろへ流し、皺なんてないスーツをパリッと着こなし、鋭い眼光に鼻梁、小さな顔は男の俺でも息を飲み程、男らしくてかっこいい。 「この火事は、お前の店からか、葉山」 「立花さん――。違うんです、こいつが、こいつがミスして」 「俺が聞いているのは、お前の店からの出火かということだ」 低い隙のない声に、葉山さんが思わずその場で土下座する。 「そうです! こいつが施錠を怠った為にこいつのストーカーに火を放たれました」 俺も急いで隣で土下座しようと両手を付いたら、いきなり腕を掴まれた。 「それは、本当か」 俺の腕を簡単に掴んで、その男は見下ろす。 その迫力に足が震えてしまったけど、俺は素直に頷いた。 「はい。俺のせいです。俺が全部弁償します」 この人がどんな人なのか俺には分からなかったけれど、葉山さんの上司なのだとしたら――こう言うしかなかった。 「近くのマンションでもボヤがあった。ここもそこも俺の不動産のモノだが、お前が原因かもしれないな」 その言葉に頭が真っ白になる。家にまで火を放たれるなんて――そんな。 「葉山、この件でこいつを暫く預かるがいいな?」 「え!?」 「勿論です。こんな失態、俺はもう此処には居られませんから、そいつに辞令押しつけたら消えます」 「待って下さい! 葉山さん、それって店をたたむんですか!? 葉山さーー」 「五月蠅いな、お前は此処で待っていろ」 俺の腕を掴んだまま、その人はベンツのドアを開けて俺を中へ突き飛ばした。 「逃げればどうなるか分かっているな? そこから動くなよ」

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