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初めてあったのに、ずっと探していたとか。
全部、立花さんの言う事を聞いていればいいとか、
勝手な言葉で俺を抑え込もうとしている。
確かに、俺みたいな、こんなちっぱおけな命、死んでしまっても構わないのかもしれないけど。
「本当にお前は男か?」
立花さんの唇が、端だけ歪んで持ち上げられる。
馬鹿にしたように笑ったんだ。この人。
「お、男です。髪は長いですが、これは練習台に葉山さんに頼まれて――」
「そうか」
立花さんは、俺の胸ぐらを両手で掴むと左右に勢いよく開いた。
ビリビリと服が裂く音と共に、ボタンが床に飛び散った。
「見ろ。男がこんなに色っぽく見えるか?」
引っ張られ、窓に押し付けられた俺は、肌蹴たシャツから見える自分の裸に青ざめる。
両手で敗れた胸元を抑えたら、今度は両手を掴まれた。
「俺の前で隠すな」
「やめ、――み、見ないで下さい、離して下さい」
窓に映った自分が、両手を掴まれて、ボロボロの服を身に纏っていて情けなくて涙が溢れていた。
俺が――。
俺が何をしたっていうんだ。
火事だって、俺じゃない。俺は被害者なのに。
なのに、こんなこんな窓の前で情けない姿で生かされている。
「し、死んでしまった方が良かった」
「何?」
「こんな、辱めうけるぐらいなら、歩道橋から身を投げさせて欲しかった」
力では敵わない、この冷たく無表情の男に、俺は抵抗もできない。
「辱めじゃない。今から俺がお前を抱くんだ。――気持ちいいって思わせてやるよ」
片手を掴まれたまま、立花さんは怖い顔で色打掛をマネキンから剥がした。
「――や、やで、す、止めて下さい」
「俺はお前にこれを着せなきゃいけないんだよ」
「女じゃないって、ちゃんと見たじゃないですか」
「暴れるなっ」
逃げなきゃいけない。
俺の本能がそう言っていた。
こんな、冷たくて怖い瞳の男。
捕まっていは行けないって。
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