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まだ状況が分からないけれど、立花さんに腰を支えられてマンションのロビーまでエレベーターで降りた。
途中、立花さんの指がお尻に当たってしまった時、身体を大きくびくつかせてしまったら、零れるような声で『面倒くさい』と言われて泣きそうになってしまった。
でも、昨日あんなに手酷く抱かれたのに俺は腰を支えられて怯えるなと言う方が無理だ。
俺が逃げないように仕事場に連れて行くつもりなのかな。
管理人さんらしき人に車のキーを受け取ると、俺を後ろの席に座らせてじっと俺の顔を見た。
その冷たい瞳に視線を下へ逸らすと、立花さんは顎を無理矢理持ち上げて乱暴な口づけをすると、俺を横へ押し倒した。
両腕をクロスさせて顔を隠す俺を小馬鹿にするように鼻で笑い乱暴にドアを閉めた。
「腰がだるいなら、会社へ着くまで寝ていろ」
別に優しさじゃない。
俺が大げさにフラフラしてるのが気に入らないんだと思う。
顔を上げる気も起きなくて俺は黙って従う。
昨日のあれで――逆らう気なんてもう湧いてこないし。
「お前、車の免許はあるのか?」
「――は、い」
「じゃあ、暫くは運転手をしろ。俺の送り迎えをお前にさせる」
「はい」
こんな高級な車を運転するなんて本当は怖かったけれど、拒否なんて出来なくて返事をするだけが精一杯だ。
暫くっていつまでだろう。
「放火魔が捕まるまではお前を家に置いておくつもりはないからな」
「……」
そう、だよね。
俺を家に置いていたら――あのマンションに火が付けられるかもしれない。
俺を守る為じゃなくて、自分の家を守るためだ。
泣いていたらきっとまた舌打ちされてしまうから、俺はクロスした腕で顔を隠して唇を噛みしめた。
この人が怖い。
女のように頭が真っ白になる快楽を植え付けられるのが――怖い。
乱暴で優しさもなく、玩具のように扱われるのが怖い。
「おい」
慌てて涙を拭いて、小さく返事をした。
「飲め」
栄養ドリンクを渡すと、車は荒く発進させた。
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