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パッと大きな身体でひらりと廊下へ飛び出した。 俺は一人残されて、びくびくしながら部屋の中を見渡す。 壁には一面本棚でファイルがぎっしり詰まっている。 立花さんの座るディスクの後ろは吹き抜けの窓で、左右に観葉植物が置かれているが、無造作すぎる。 男っ気しかないというか、殺伐とした、何だか息がつまりそうな部屋だった。 「何をしている? そこのソファに横に慣れ。起きたら――今度は立てなくなるまで抱くぞ」 「――っ」 怖くなってすぐにソファに座る。 ふかふかで、座った瞬間半分ぐらい体重で沈んでしまった。 上着が皺にならないように脱ぐと、何故か立花さんが俺を睨んだ。 いや、脱ぐのを見てる? 突き刺さるような視線が怖くて背中を向けてソファに横になった。 「社長、愛沢君に社長の楽しみにしていたショートケーキをあげて良いですか? 色が白すぎて顔色が悪すぎる。社長にいじめられたかな?」 「……好きにしろっ」 ……途端に不機嫌になってしまったけれど、そんな好物を本人の前で食べる勇気ありません。 「でも本当に顔色悪いですし――どうして家に寝かせてあげなかったんですか? 愛沢君はまだ何も知らないからきっとこんな所怖いだけでしょうに」 何も知らない? ってか、この人何で俺の名前知ってるの? 「うるせーな。お前、さっさと仕事に戻れ。そいつは俺のだから俺が何をどうしようと勝手だろ」 「可哀想に。愛沢君の気持ちは聞いたのですか?」 「聞く必要がどこにある?」 「あの、俺!」 どんどん不機嫌になる立花さんが怖くて、この優しそうな人が理不尽な扱いを受けているのも申し訳なくて、口を出してしまった。 「――その、静かに寝てますので迷惑かけませんからどうか、気にしないでください」 本当は――聞けるなら色々聞きたい。 どうして此処に連れてきたのか。 なぜいきなりあんな色打掛を俺に見せたのか。 此処でどんな仕事をするのか。 何も説明なしで、不安で頭が壊れてしまいそうなのは本当だ。 だけど、今はもう静かに眠っていたかった。 昨日みたいに機嫌を損ねる方が怖いから。

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