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静かな三人だけのオフィスで、時折電話がかかってくるのみ。
パソコンのキーボードを打つ音だけが部屋中に広がる中、俺はふかふかのソファで目を閉じてただただ耐えた。
頭までタオルケットで隠して、ただ眠る。
そうすることしか、今の俺には許されないと分かっていたから。
「おい」
何時間経っただろうか。
「おい、起きろ」
「!?」
飛び起きると、立花さんが俺を見下ろしていた。
立花さんの背中の窓からは、すっかり暗くなった空とビルのネオンが見えている。
「立てるか?」
「……はい」
スッと差し出された手に、身体を強張らせると無理矢理立たされた。
「昼も何度も起こしたが、あんまり熟睡だったから菊池が起こさなかったんだ。腹は?」
ぶんぶんと首を振ると、沈黙が流れる。
「帰るぞ」
その言葉が――昨日の事を思い出されて頭が真っ白になる。
どうやって帰ったか思い出せないけれど、気づいたら玄関に立っていた。
先に靴を脱いで中に入って行く立花さんが後ろを向いて俺を待っているのか睨みつける。
それが――その目が怖くて俺は視線を落とした。
「いつまでもそんな反抗的な態度をとるつもりだ」
「は、反抗なんてしてないじゃないですか。貴方に逆らえないことぐらい俺はもう自覚しています」
靴を脱ごうと少し屈むと、腰がピリピリと痛んで思わず小さく息を飲んでしまった。
「そう言えば、せっかく下着を履いていなかったんだから仕事場でも抱いてやればよかったな」
だ、く?
咄嗟に顔をあげたら、すぐ傍で立花さんが俺を見下ろしている。
「上着とズボンを脱げ」
「こ、ここでですか?」
「そうだ」
嫌に決まっているのに、身体は逆らう事などできないと理解していた。
恐る恐る上着とズボンを脱ぐと、Yシャツだけのなんとも惨めな格好になってしまった。
お尻が見えそうで後ろに引っ張ると前から――キスマークの跡だらけの太ももが現れて見苦しかった。
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