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のろのろと出ようと受話器を取ろうとすると、寝室から立花さんが出てきた。
そして、受話器を取ろうとしていた俺を見て、見下ろしながら睨みつける。
「誰が出て良いと言った」
「すいません」
しゅんと項垂れた俺を無視して、玄関へ消える。
行き場のない自分が、惨めで部屋の隅でただただ立ち尽くしていた。
(良い匂いがする……?)
次々に、良い匂いを感じて首を傾げていたら、両手に食事を持ってリビングへ立花さんが入って来た。
カレー、ピザ、お寿司に、お弁当?
次々にテーブルに並べると、俺を見て舌打ちする。
「???」
また、インターフォンが鳴って立花さんが俺を見る。
「その恰好でお前が取りに行くなら出ろ」
「無理ですっ」
「じゃあ、いちいち泣きそうな顔をするな」
玄関まで取り行き戻ってきたら、ラーメンとファミリーサイズのボックスに入ったアイスだった。
立花さん、こんなに食べるのだろうか。
そんなに食べられそうに見えない細身なのに、――あ、もしかしてお昼も食べてないのかな。
「好きなのを食べろ」
「え、俺がですか?」
「昼も食べてないだろう。好きなのを食え」
「こ、こんなに食べれないですから、あの、立花さんも」
「俺はまだ仕事がある」
そう付き離された冷たい言い方に寂しくなる。
こんなに御馳走があるのに一人で食べるなんて。
「一緒に食べてはくれない、ですか?」
寝室へ戻ろうとする立花さんの背中へ小さく言う。
「俺は――餌さえあげていれば泣いていても貴方にはどうでも良い存在かもしれないですが、こんな生活おかしくなりそうです」
ゆっくりと振り返った立花さんは、口を手で隠しながら気まずそうに視線を泳がす。
「俺に怯えてるくせに俺がいたら――食べれないんじゃないのか」
「……貴方が怖いことしかしないから」
でも。
この出前って俺の好きなものが分からないから取り合えず手当たり次第注文してくれたようにも見えた。
「お前が勝手に怖がってるだけで、これが俺の普段通りのつもりなんだが」
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