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「じゃあ、一緒に食べて下さい」 お願いして、そう立花さんの目を見上げると、すぐに逸らされてしまった。 でも。 「パソコンをこっちへ持ってくる」 不機嫌そうにそう言って、寝室へ戻ると、凄い勢いでパソコンを持って出てきた。 「お前は、何が好きなんだ」 先に選べと促され、美容院時代には食べられなかった特上と書かれたお寿司に視線を送りつつも、無難にカレーに手を伸ばす。 「俺はこれが」 「嘘なら、今からベットに直行する」 見透かされたのか、――さっきの一瞬で気づかれたのか、恥ずかしくなるけれど、お寿司に手を伸ばした。 「……これ食べていいですか?」 「俺はカレーが良かったから、後は好きにしろ」 ふんっと冷たく言い放つと、キーボードを打ちながら、カレーを一口頬張る。 「?」 カレーが好きなのかな。 俺がカレーを選んだだけで、たまたま? 「いただきます」 うわあー。このお寿司屋さんって美容院の近くにあった一見さんお断りって感じの高級そうなところのだ。 出前なんてしてくれるんだ。いや、もしや、立花さんだから? 雲丹を頬張りながら、口の中で蕩けてしまって思わず頬を押さえる。 「美味しいです」 「そうか。アイスも食え、ピザも冷めたら美味しくないぞ、ラーメンも伸びる」 「こんなに食べられないです」 でも、ちょっとだけ立花さんの回りの空気が穏やかになった気がする。 もしかして、――立花さんお腹空いてて苛々していたのかもしれない。 「無理矢理抱かれた男とご飯なんて食べて美味しいのか?」 視線をパソコンからあげないまま、立花さんが言う。 少し緊張して声が強張っているような気もした。 「俺が逃げなきゃ、手酷いことはしないんですか?」 「だが、抱く。目の前に捉えたのだから、抱く」 「――っ」 きっぱりと言われて、昨晩の立花さんの引き締まった身体が、月の光で浮かび上がるのを思い出してしまった。

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