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「すいません。もう食べれません」
「そんなのだから細いんだ。ちゃんと食え」
「……お風呂に入ってきます」
俺が一緒にご飯を食べたかったのは、もう少し立花さんという人を理解したかったし、――昨日の様な事を止めて欲しかったからだ。
立花さんへの借金も返して行こうと思うし。
放火犯の事も気になるけど、テレビすら見ていない。
窮屈な空間で、息をすることが許されているだけ。
お風呂場の扉を開けていたら、立花さんがラーメンの入った器を、ゴミ箱にそのまま投げ捨てているのを見てしまった。
「立花さん?」
「なんだ」
苛々した口調だったけれど、俺も顔色を伺いながらゴミ箱を指差す。
「まだ食べて無かったのに、捨てるのは勿体ないですよ。それに器は洗って返さなきゃですし、その他のご飯も食べないならラップに」
「お前が食べないなら、必要ないだろ。うるさい」
どこかの料亭のお弁当かわからないがそれさえも投げ捨てようとしたので、慌てて奪うと冷蔵庫を開けて中に入れる。
「――?」
中は、缶ビールがびっしり入っていて、他の物を置くスペースは無かった。
「これは」
「俺は家では飯は食べない。だから、キッチンには何もない」
そう言って、キッチンの備え付けの扉を開けるが、本当に何も入っていなかった。包丁やまな板すら置いていない。
「じゃあ、なんでこんなにいっぱい注文したんですか?」
俺一人じゃ食べきるはずもないのに。
だったらカレーが食べたいっていうのも嘘だ。
「お前は質問ばかりでうるさい」
眉間に皺を寄せて、不機嫌そうにそう言うと、胸ポケットから煙草を取りだした。
灰皿だけは――綺麗なまま置かれている。
価値観とか生活環境が違うからか、――こんなに御馳走を並べても感動一つしない立花さんは、俺の質問さえ鬱陶しいと拒絶した。
分かりあう必要は、俺達には要らないと。
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