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シャワーを借りて、パジャマも何もないのでまたYシャツ一つでベットに入った。
ベットの隅の隅で縮まっていたら、リビングから聞こえてくる立花さんのタイピングの音が部屋中を支配していた。
あの音が終わったら――来る。
一緒のベットで眠るだけじゃすまないんだ。
さっきみたいに一方的に触って来るかもしれないし、昨日みたいに口から全て支配されて――自由を奪われるかもしれない。
そんな中、眠れるはずもなくて。
ただただ目をぎゅっと閉じていた。
「――落ちるぞ」
「!?」
いつの間に入って来たのか――それとも俺が一瞬意識を飛ばしていたのか、立花さんが枕の位置まで俺を抱きよせると、そのまま俺を枕に仰向けで沈めた。
「立花さんは、お風呂」
「明日入る」
上の服を脱いだ立花さんが、俺を見つめる。
ベットサイドに手を伸ばすと、何か手に垂らして指先を濡らしている。
それが俺の昨日開かされ腫れた部分に宛がわれると、昨日の引き裂かれるような痛みを思い出して首を振る。
「あの、お願いします、今日、俺――んんっ」
冷たい指先が、腫れた部分を撫でていく。
「おねがっ く、――く、ちでします。口で受け止めますから、そこさ、触らないでください」
今日も無理させられたら、明日は起き上がれない自信があった。
プライドを粉々に砕かれて泣き叫んで、支配される恐怖に俺は何度も何度も首を振る。
真っ暗にした部屋で、立花さんの瞳が獰猛に光ったような気がし、た。
「薬を塗っただけだ。さっき塗ってやつ」
「え」
「――今日は顔色が悪い。もう、寝ろ」
「……」
「今日は我慢してやる」
そう言うと、横の枕が沈んで行くのが分かった。
隣で寝るだけ? 本当に?
暗闇で表情は分からないけれど、不意に立花さんの手が伸びてきた。
震える俺を捉えると、そのまま胸に引き寄せる。
煙草の匂いがした胸に抱かれて――俺は立花さんの寝息が聞こえてくるまで緊張して息を吸うのも苦しかった。
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