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「おい、さっさとそのチビと一緒に出ていけ」 「チビじゃありません! 貴方こそ僕の大事な社長に馴れ馴れしくしないで下さい! 貴方の代になってから立花不動産はヤクザみたいだ!」 キーキーと猿のように喚くチビを睨み付けると、緑の背中に隠れてしまった。 160センチあるかないかのチビでやたら目がでかくて、海外の大学を飛び級した天才。おまけにイギリスの王族の血だとか。 笑ってしまうような肩書きを鼻で笑い飛ばしたら、そのチビは俺を睨み付けた。 にらみ返したら怯えたのでガキはガキだ。 「もう少しまともな秘書を雇え」 「あ、貴方に社長を悪く言われたくない! 大体、貴方の評判最悪ですからね。景観も気にせずタワーマンションをボンボン建てて。ヤクザみたいに金儲けばかり」 「リュー。大事な人の前です。言葉を慎みなさい」 「大事な人?」 可笑しいぐらいに狼狽えるチビを置き去りにし緑は榛葉に手を伸ばす。 「行きましょう。俺が貴方を守ります。優征には任せられません」 俺の隣にいた榛葉は大きく体を揺らしたあと、俺を見た。 そして緑を見て迷っている様子だった。 「大丈夫です。俺なら貴方を守れますから」 緑の言葉は本当だ。 あいつの家なら俺の家と同等のセキュリティだし、もし――うちの手の者が犯人なら近づけない。 だが、榛葉は俺の花嫁だ。 バァサンからそれを条件にこの財産を継いだ。 そう簡単に離すものか。 「行きたかったら行けばいい」 冷たく俺が言い放つと、真意が分からずに戸惑っているのが分かった。 「ただ俺には――お前が必要だ、榛葉」 情に弱いお前を揺さぶる。 そうすれば結果は明らかだ。 「ごめんなさい寒田さん。俺、立花さんの手当てが終わってないですから」

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