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身体が丸く縮まり足の指先が大きくしなる。
頭が真っ白になり何も考えられないような――快楽には正直になっている。
でも、違う。
俺が欲しいのは貴方からのこんな快感ではない。
「立花さんっ ちゃんと話をっはなしっを――」
目の前がチカチカとして、甘い息が零れる。
俺は果てそうになる自分が許せなくて、手を強く噛む。
ギリギリと噛んだら、口の中で鉄の味が広がっていく。
「噛むな」
気づいた立花さんが口を離した瞬間、俺は口から手を離し代わりに濡れて固くなった自分を強く握りしめた。
「お、俺が必要だって言った事が真実なのか知りたいです」
はぁはぁと息を切らしながら濡れた目で立花さんを真っ直ぐ見た。
「嘘は言わない」
立花さんも真っ直ぐ見てくれる。
その言葉だけでも俺は貴方を信じれるのかな。
「ばぁさんの遺産を相続するためにもお前の存在は生かしておかなければいけない」
喉の奥が小さくひゅっと鳴るのが分かった。
俺は今までいつも不幸ばかり寄せ付けていたから、だからこんな要らない自分を助けてくれた立花さんになら――玩具のように抱かれるのは仕方がないのかもしれない、
そう受け止めようとしていたのに。
貴方は俺を助けたわけじゃなくて。
自分の地位を守るために俺を生かしているだけ。
だから酷い事が平気でできるんだ。
両目から音もなく涙が流れて……目の前の立花さんの顔が滲む。
立花さんは俺が何も言わなくて下を向いた事に焦れたのか、俺の足を自分の肩に乗せた。
「泣くな」
苛立つ立花さんに俺は諦めて横を向き、両手をソファに押し付けるようにしがみつく。
次に来るのが痛みでも快感でも――それは俺のためのものじゃないから。
何度口で起たせようとしても俺が反応しなくなったので、立花さんは口から離す。
「なぜ泣くんだ。俺は理由を答えたろ」
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