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「す、すいません」
「お前が誰の土地で商売してるかよく考えろよ」
散々、榛葉の容姿を利用していたくせに。
どちらにせよ、榛葉が辞めさせられたヘアサロンなんて長くないだろうが。
大切に使っていただろう仕事の道具たちが一袋で収まったのが、何故か腑に落ちないが奴らしいといえば奴らしいだろう。
ストーカーに部屋を荒らされ、榛葉は三回引っ越しを余儀なくされている。
それを見て、だが俺が手助けをしているとバレるわけもいかなく、こっそりと俺の管理しているマンションに住まわせたのに。
刃物を振りかざした奴は俺の事を雇い主から聞いていなかった。
あいつもこいつも犯人に見えて、益々榛葉を手元から離したくなくなる。
「あー。立花さーん。おかえりなさーい」
こんなに心配し守っているというのに、等の本人は。
「…………寒田、説明しろ」
「あー。やっぱりお寿司ですねー。わー高そう!」
「寒田!」
「榛葉さんが思い詰めてたから、ジュースだと言ってお酒を薦めてみたら酔った」
「…………」
「おっと。俺を怒るのは間違ってるだろ? 誰がこんなに榛葉さんを追い詰めてるのか? 俺か?」
寒田に睨まれて、思わず怒鳴ろうとしたら、俺たちの間に榛葉が飛び出してきた。
「喧嘩は止めて下さい! それに俺は酔ってませんっ」
鼻まで真っ赤にしながら、目を潤ませても説得力はない。
「それより、お寿司食べましょうよ。俺、ここのお寿司屋さんのガリ好きですよ」
「がり?」
「ぶっ」
「毎日毎日、特上寿司だから、味をかえてくれるがり好きです。俺、カレーも福神漬けが大好きなんです」
へらっと天真爛漫に笑う榛葉に、眉をひそめてしまう。
笑う姿を――ばぁさんの前でしか見たことがなくて、これが本当の笑顔なのか信じられない気持ちだ。
「優征……お前、本当に毎日寿司じゃないよな」
「これを榛葉が好きだと言ったんだ」
むきになってそう答えると、寒田は大きく溜め息を吐いた。
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