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五、不器用な、

立花さんの言葉から、まだ一時間も経ってないと思う。 ズキズキした痛みが、ほんの少しだけ軟いで来たのは薬が効いてきたのかな。 (トイレに行きたい) むくりと起き上がると、ベットサイドに時計が置かれていた。 いつもならとっくに出勤している時間なのに、立花さんはディスクに向かってパソコンをカタカタと打ち込んでいた。 さっきみたいに優しく薬を飲ませてくれたり甲斐甲斐しく布団をかけてくれたのに、俺が起き上がった気配さえ気付いていないのかな? ベットから降りてスリッパを履こうとすると、こちらを向かずに立花さんが話しかけてきた。 「何処に行く?」 「あ、あの、薬ありがとうございました。ちょっとトイレです」 仕事が忙しいのか振り返らない立花さんは、――さっきの恐怖を彷彿させるような言葉を吐いた。 「俺の仕事が終わるまで駄目だ。ベットに入っていろ」 「えっ……」 「俺の言う事が聞けないのか?」 その言葉に身体が金縛りにあったかのように動かなくなるけれど、でも、何で? 「お願いです。俺、逃げないし、すぐに帰ってきますし」 立花さんは俺の方を向かずにずっとパソコンに向かっている。 こちらを向かないのが――俺に対して何か怒っているのか分からない威圧感から、冷や汗が出てくる。 怒っているなら、逆らいたくないけど、でも俺だって限界だし。 スリッパを履いて立ちあがると、立花さんはまた冷たく言い放つ。 「動くなと言ったろ?」 冷たく切り捨てる様な――言葉。 「トイレぐらい行かせて下さい」 「お前は俺に逆らわないと言っただろ?」 「立花さんっ」 「俺への忠誠をちゃんと見せろ」 「っ。いやっ、だ」 この人、俺にペットボトル一本の水を飲ませたって言ってたのに。 トイレに行きたい。 けれど、足が竦んで動けない。 許しを得ずに行ったら――お仕置きと称して何をされるんだろう。 俺は我慢して力を入れたけれど、眠っている間に限界になっていたそれは、ふるふる震えていた。 「立花さん、行っていいですか?」 「駄目だと言っている」

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