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なんでこの人に、全て従わなきゃいけないんだ。
俺がこの人より全て持っているのもが弱いから?
弱いから支配されて、管理されて遊ばれるの?
じわりと涙が溢れて来たけれど、この人の前では泣き過ぎてる。
きっとまたかと鼻で笑われるだけだ。
「お前はそれでいいのか?」
「――――っ」
ベットで、情けないけれど握って我慢しようとしていた俺に、立花さんが言う。
「俺から逃げれないから諦めると言う、ならば俺は自尊心も奪ってお前の意思を全て支配する、お前はそれに抗うつもりもなく、そんな失態をそこで犯すのか」
「?」
この人が何を言っているのか分からない。
この人が俺を支配して、いじめて、こんな命令をしているのに。
「お前は不幸体質ではなく、上辺だけの優しさに騙されて本質は見ない。床へ落としたシザーケースみたいに都合の悪い現実は流されて忘れて、また安っぽい優しさに騙される。そんなお前だからこそ、俺から本当に逃げるのを放棄したのか、心までは支配されるつもりはないのかお前が決めろ」
心まで……?
何で突然そんな事を言うのか、心当たりは酔った俺が何か言ったことぐらいしかない。
記憶が無かった時の発言で――怒っている?
何で俺を試しているんだ?
動かないで、言葉だけで俺に命令しているだけ。
走ってトイレへ駆け込めば俺は命令は破るけど、自分の自尊心は守れる?
決めるのは俺?
「ほ、本当に貴方は、俺なんか人とも思ってなくて、こうやって遊んできっと暇つぶしぐらいに思っているんですね」
だったら、どっちでもいい。
此処で恥をかくのも、勝手に動いてお仕置きされるのも、そう俺の心を壊すダメージは変わらない。
「俺が壊れれば貴方はきっと満足なんですね」
言葉をくれない立花さんの意思を俺は上手に読みとることは出来なかったけれど、トイレまで全力で走った。
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