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部屋に入って鍵をかける。
立花さんは追いかけては来なかった?
てっきりあのまま――……。
そう考えたら身体の芯が熱く硬くなる。
タオルで押さえても……熱は下がらない。
カーテンから漏れる月の光が、ゆかりさんの打ち掛けが浮かび上がった。
俺が女であっても立原さんなんかのためにこの服なんて着れない。
言葉なんてくれない。
も……もしかして、と何度か彼なりの優しさが垣間見えた気がしたけどそれすらももう俺には何も見えなくなった。
あの人にまた明日――抱かれる。
そう思うと身体の芯の熱が取れないんだ。
作り替えられて、奪われていく日常が怖くて怖くて堪らない。
「おい。パジャマぐらい着ておけ」
ノックされて扉一枚隔てた向こうに立花さんがいる。
そう思ったら息も吸えなくなる。
「まだ身体は火照っているのか?」
「――っ」
意地悪だ。
この人、やっぱり意地悪だ。
「お前は胸が弱い。どうせ空気に触れて尖っているんだろ。自分で弄ってみろ」
「なっ」
「此処で聞いていてやる。高ぶった自身を自分で処理して見せろ」
「――――っ」
タオルで押し隠していたその高ぶりが………そんな挑発に乗ったのかタオルを押し上げていく。
胸なんか感じるわけない。
立花さんが触るまで自分でも触ったことなんてなかった場所だ。
「ふ。俺の言葉が怖いのは図星だからか」
「ちがっ違います! 離れて! 離れて下さい!」
「指を入れたらお前は強く締め付ける。奥へ奥へ侵入しようとすると狭いそこは拒絶するかのように俺を締め付ける。だが――胸を弄るとお前の中は畝る」
「止めてください! 止めて……止めて下さいっ。俺を追い詰めてどうしたいんですか」
胸なんて弄って俺を押さえつけて。
「俺が壊れたら満足なんですか」
いつもそうだ。立花さんの行動は俺をめちゃめちゃに傷つける。
「お前が気持ち良いと認めないからだ。――逃げるなよ」
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