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床暖房は暖かいのに、俺は今も昔も本当に暖かいものに触れたことは少なくて。 だから、誰かと触れらえて、誰かと話ができる美容師は楽しかったのかもしれない。 厄介者だった俺に髪を切らしてくれたお婆ちゃんが俺に『ありがとう』って言ってくれたこと。 それがどんなに嬉しかったか……こんな俺にでもお礼を言ってくれる。 こんな俺でも人の役に立てる。 そう思えたら、涙が溢れてきた。 あの時の涙が乾いて、今は毎日馬鹿みたいにあの人の言葉や行動に傷ついて泣いている。 自分を不幸にしているのは自分なのかもしれない。 『いつもありがとう。榛葉さん』 上品に笑うゆかりさんの、綺麗に手入れされた髪は美しくてドキドキした。 彼女との思い出まで――壊さないように。 俺は強くなりたい。 強くならなきゃ、この閉じ込められた世界であの人に翻弄され続けて自分で自分を壊してしまうんだ。

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