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「あの……藤宮さんでしたよね。藤宮さんはどうしてここに?」
ここら辺はオフィス街だし、私服の人が居るのはちょっと珍しい気がする。
や、窓から外を見下ろした狭い範囲だけかもしれないけど。
「はは。ずっと空き巣被害を防げなかったし、とどめにあの火災だろ? 今度からもう少し先の交番に移動になったんだ。今日はその手続き」
「ええ。そうなんですね。俺は……今、立花さんの会社で、じ、事務をしながら火災の賠償を」
「――榛葉」
藤宮さんとの会話中、立花さんがコンビニへ入ってきた。
ポケットに携帯を仕舞いながら向かうって事は電話は終わったみたいだ。
「誰と話している?」
「あっ……」
その瞳が冷たく射抜く様に静かに怒ってるのを見て、俺は言葉が出なくなってしまう。
「立花さん。お久し振りです。西町交番の藤宮です」
のんびりと藤宮さんが立花さんに挨拶すると、怪訝そうな顔をする。
「なんでお前が此処に?」
「あの、此方に移動になったらしくて……」
「お前に聞いていないだろ!」
吐き捨てるように怒鳴られ、更に萎縮した俺を見て、立花さんは舌打ちした。
「俺はこいつに聞いている。おい、その腕はどうした?」
「単車で転んでしまいました。どうしたんです? ピリピリしてますが」
藤宮さんが首を傾げると同時に肉まんが出来たとお店の人におずおずと言われ、俺が受けとると菊池さんまでやってきて代金を払った。
「質問を変える。どうやって榛葉の居場所を掴んだ?」
(――……え?)
立花さんの言葉に肉マンをポロリと落とすと、菊池さんがキャッチした。
そして藤宮さんが、爽やかな笑顔を――ニタリと歪ませて俺を見る。
「あの夜、貴方が拐ったのですから。貴方を張り込んでいれば会えるに決まってますよ」
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