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七、秘密
発砲事件から数時間。
side:立花 優征
榛葉のストーカーの拳銃の入手経路は特定していた。
あとは証拠だ。
榛葉を寒田の家に預け、向かった先は料亭『時雨荘』。
黒塗りのベンツが何台も止まる中、あばら骨を何本か折ったはずなのに表情を変えない菊池と車から降りた。
藤宮 輝彦(ふじみや てるひこ)。 34歳。
あの火災のあった当日、やたら榛葉をどこに連れていくのかと食い下がった男だ。
元から、こいつが榛葉の家の空き巣被害の届けを出していなかっただけでなく、榛葉を尾行する姿を俺の部下にはらせていた時に目撃していた。
俺が榛葉の部屋に荷物を取りに行った際に――一人だけ右腕を折った犯人に拳銃をちらつかせたので気絶するまで痛め付けたはずが、
運送中に逃走したらしかったしな。
全てが全て、お前に当てはまるが、自分から榛葉の前で尻尾を出してくれて助かった。
バカ正直な榛葉が警戒してくれるからな。
「それにしても、立花社長酷いなー。私に撃たれろなんて言うんですから」
「防弾チョッキを着ているんだ。肋(あばら)が折れるぐらいですむだろう」
「あのねー。肋はとくに固定して治さなくて自然治癒がほとんどなんですからね」
「だがお前が撃たれたおかげで弾丸が手に入った」
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