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弾丸を調べたらすぐに分かった。 警察官が持つ拳銃ではない事から、藤宮は足がつく場所からは入手していない。 それどころか――向こうから玩具を与えるように渡されたのかもしれない。 「お久し振りです。兄さん」 時雨荘の二階、庭を見渡せ、人払いもできる『唐紅の間』。そこには既に何人もの黒服を携えて静かに酒を飲んでいるじいさんの姿があった。 菊池が深々とお辞儀をし中に入るが、俺はそのまま一瞥したのにち席に黙って座る。 「相変わらず、礼儀も知らん糞餓鬼が」 ふっと唇の端だけ歪ませたあと、杯をゆらゆら揺らせ波打つ酒を眺めて此方を見ない。 立花 佐之助。 香港に密売ルートを持つ、五代目立花組の当主。 ゆかりの旦那と腹違いの、ただのチンピラの分際で。 面倒で億劫で忌々しい。 本当ならとっくに、今ごろ榛葉をネクタイで縛り、怯えた目を快感で濡らして――朝まで泣いても抱いている予定だったはず。 「今日、会社前に拳銃を持った馬鹿が俺の秘書目掛けて発砲しやがった」 「ほう。大丈夫か、菊池」

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