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いつものんびりした菊池さんがこんなに慌ててるなんて。 俺は言われた通りに、菊池さんが開けてくれた車に乗り込んだ。 「――――!?」 「寒田様、あとは私が送り届けますので」 「榛葉くん、貴方が心配だったらしくどうか怒らないであげて下さい」 二人の会話が車のドア一枚向こうから聞こえてくるのに。 俺は目の前の冷たい瞳で睨んでくる立花さんを見て、呼吸の仕方さえ分からないくらい固まってしまった。 ひゅっと息が喉で引っ掛かる。 最初にあったあの時と同じ。 逃げなくちゃいけないのに、身体はこの人から逃げられないって覚えている。 「勝手に抜け出して良いと俺は許可を出したか?」 「あ……ごめ、なさっ」 「佐之助は寒田からも注意された人物だろ?」 伸びてきた手は、俺の肩を掴むと乱暴に押し倒してきた。 車のあちこちに背中をぶつけてピリピリと痛む中、立花さんは俺の首に外したネクタイを巻き付けて、冷たく見下ろしている。

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