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傷つけたいわけじゃない。
ただ縛り付けたい。
縛り付けるには躾るしかない。
「今日は何もしない。俺も仕事で疲れている」
「立花さん……」
「身体を拭いてやろう。待ってろ」
「やだ」
榛葉は俺の背中にしがみつくとフルフルと震えている。
「もう無理です。もう限界なんです。貴方の」
貴方の全てが怖い。
榛葉の掠れた声が弱々しくそう言った。
「お前を守るためならば、お前の気持ちは後回しで構わないと思っている」
「少しでも……優しさが欲しい。辛いです」
一方的に頭から押し付けようとした俺に、榛葉は怯えて……優しさをねだる。
「優しさとは何だ?」
だが俺はそれをどう榛葉にやればいいか分からない。
榛葉のためにと思った事は何一つ上手くいかないからだ。
「せめて俺が貴方と同じ感情ある人間として扱ってくれませんか」
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