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「寝ろ」
体温計だとか薬だとかは寒田が用意したあの救急箱に入っているとは思うが、念のために寒田を呼び出そう。
「あ、――汗が気持ち悪くて」
何時間も玩具で弄られていたのだから汗じゃないものも身体中をベタベタと汚しているのだろう。
「ごめ、――ごめんなさい。足がまだガクガクしてて立てないんです。ちょっとだけじっとしてたら治ると思うのですが」
泣き出しそうになりながら、具合の悪い様子を隠そうとするので苛々する。
「……身体を拭いてやる。それでいいか」
そう尋ねた後に震えながら首を振る。
「じ、自分でします」
……やはり怖いままなのか。
「なので、濡らしたタオルをレンジで温めて貰っていいでしょうか」
それは、俺に意見を言ったり反抗するのを諦めていた榛葉が初めて見せた俺への意思表示だった。
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