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俺はただ――立花さんと菊池さんが心配だっただけなのに、車の中でイく事も出来ず、立花さんのものを何度も受け止め、マンションに帰ると、次は玩具でイきたくないと懇願しても何度も何度も辱められた。
歩み寄りたくても、現状を打破したくても、立花さんが心を見せてくれない。
それがあの人の生きて来た世界なのかもしれないけれど。
「変わりたいなら、――僕は協力しますよ。貴方なら本当に売れるモデルになりそうだ」
「や、俺、そんな芸能界には興味はないので」
「そう? でも、君が立花優征の元から離れられないのは、借金があるからだよね?」
「……そうです」
火事で出た賠償額はきっと俺の一生分の給料でも払えないぐらいだと思う。
「それ、うちの社長が調べたんですが、幾ら借金があるか知りたいですか?」
「え、えええ!? でも、目が飛び出るぐらいの金額なら聞きたくないかな。俺、きっと気絶しちゃう」
「そうですか。では止めましょうか」
「えええ」
目の前が真っ黒になった。
やはり、とんでもない損害が?
お粥を食べていた手が、途端に震えだす。
味ももう、何も分からなかった。
つまり――言えない様な額なんだ。
「0です。貴方が損害を賠償する額は、今のところ0です」
「ぜ、ろ?」
一瞬、それはいくらなのか本当に分からなくてポカンとしてしまった。
それって幾らなんだろう?
「マンションの方は、火災保険に入るのは義務付けられているのに契約のお金を払っていなかったって言いましたが、加入はしてましたよね?」
「一応。ただ、お金を払うまでは未加入扱いだって聞いてたんです」
「引っ越してきた時期と火災が重なったのも混乱の原因でしたが、大丈夫です。0です。そして、テナントビルの方は、会社の方で火災保険に入っているから、貴方へ請求する必要は、全く一ミリもありません。仮にあるとしたら犯人へだけです」
俺に借金がない?
一円もない?
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